自宅を売却すると、土地や建物の所有者は売主から買主に移転します。売却に伴い、自宅に掛けていた火災保険や地震保険は原則として解約が必要です。
ここで「いつ解約すればいいのか」「保険料は戻ってくる?」と疑問に思う人もいるでしょう。本記事では、自宅売却時に必要となる火災保険や地震保険の手続きについて、タイミングや注意点もふまえて解説します。
自宅売却時は火災保険・地震保険の解約が必要
火災保険・地震保険は特定の建物・家財とその所有者に紐付く保険契約です。
自宅を売却したからといって自動的に保険契約が終了するわけではなく、補償が買主に引き継がれることもありません。原則として売主は自ら保険会社に連絡を入れ、解約手続きを行う必要があります。
保険会社によっては、契約名義の変更によって売主から買主に補償を引き継げるケースもあります。しかし、実際には名義変更を行うケースはそう多くありません。売却相手の多くは面識のない第三者のため、基本的には売主が解約手続きを行い、買主が新たに火災保険・地震保険を契約する流れが一般的です。
なお、地震保険は火災保険に付帯する形で契約する特約です。主契約である火災保険を解約すれば、地震保険も自動的に解約されます。
自宅売却時の火災保険・地震保険の解約手続き
火災保険・地震保険を解約する際の基本的な手順は以下のとおりです。
1.保険会社または代理店に連絡
まずは、契約者本人が加入先の保険会社または契約時の代理店に連絡してください。電話やウェブサイトで手続きを受け付けているケースが多いため、インターネットで「●●保険 解約手続き」などと検索してみるとよいでしょう。
2.解約書類の受取と提出
保険会社や代理店から所定の解約請求書を受け取り、必要事項を記入したうえでその他の必要書類と合わせて提出します。多くの場合、手続きにはこの解約請求書と火災保険・地震保険の保険証券(または保険契約継続証)が必要です。
なお、保険証券は紙で発行される場合と電子タイプのWeb証券があります。証券が手元にない場合、Web証券として発行されている可能性があります。スマホやPCのフォルダにWeb証券のキャプチャやPDFファイルがないか探してみてください。
3.解約が成立し、未経過保険料が返金
提出書類に不備がなければ、解約手続きが成立します。その後、人によっては未経過保険料の返金があります。未経過保険料とは、火災保険・地震保険を年払いや一括払いにしていた際の解約返戻金を指します。
途中解約の時点で保険の残存期間がある場合、その期間に対応する保険料が返金されます。ただし、返金の有無や返金額は契約内容によって異なり、必ず返金があるわけではありません。
解約のタイミングは?
自宅売却であれば、原則として解約のタイミングは「家の引き渡しと所有権の変更(名義変更)が済んだ後」に行います。ただし、解約手続きには時間がかかる場合もあるため、引き渡しの数週間前には保険会社に連絡しておきましょう。
あらかじめ必要書類を用意しておけば、引き渡しと名義変更後、速やかに解約手続きを行えます。書類で実際の解約日を「引き渡し日以降」に指定することで、売却完了前の万が一の事故にも対応可能です。
未経過保険料はいくら?
未経過保険料の金額は、保険会社各社が使用する「未経過料率」によって決まります。
たとえば、損保ジャパンが公開している未経過料率表(平成22年1月1日以降始期契約用)によると、10年契約の火災保険を8年1か月半で解約した際の料率は19%です。
仮に火災保険料を10年分(12万円)まとめて一括払いをしていた場合※、未経過保険料は以下のとおりとなります。
- 12万円×19%=2万2,800円が未経過保険料
※火災保険の10年契約は2022年に廃止されています。詳細はこちらの記事を参照してください
契約から解約までの期間が短く、支払っている保険料が高いほど、未経過期間に応じた返戻保険料も高くなる傾向があります。ただし、未経過保険料は保険会社や商品、地震保険付帯の有無などでも異なるため、詳細は保険会社に問合せて確認してください。
解約前に要チェック!火災保険・地震保険の注意点3つ
火災保険・地震保険を解約する際は、手続きの前に以下の3点を確認しておいてください。
火災保険で修繕できる箇所はないか確認する
火災保険の補償範囲は意外と広く、自宅の中のちょっとした事故にも対応できることがあります。引き渡し前に火災保険で修繕できる箇所はないか、改めて確認しておきましょう。
たとえば、以下のようなケースでも補償の対象になることがあります。
- 子どもがおもちゃを投げて液晶テレビの画面が割れた
→火災保険の「破損・汚損」補償の対象となる可能性あり
- 引っ越し作業中に家具を倒してしまい、ドアに傷が付いた
→火災保険の「破損・汚損」補償の対象となる可能性あり
- 自宅敷地内に停めていた自転車が盗まれ、新しい自転車を購入した
→火災保険の「盗難」補償の対象となる可能性あり
ただし、火災保険の対象はあくまで突発的な事故による損傷であり、経年劣化や日常使用による傷みなどは補償の対象外です。気になる傷がある場合はまず保険会社に問合せてみてください。
火災保険に質権が設定されていないか確認する
かつて住宅ローンを組む際、銀行が火災保険に「質権」を設定することがありました。これは住宅ローンの担保として、保険金の請求権などを銀行が確保する仕組みです。
質権が設定されている火災保険契約を解約する際は、銀行で質権抹消の手続きが必要です。古い契約だと質権設定の可能性があるため、気になる人は住宅ローン契約時の書類などを確認し、銀行に問い合わせてみてください。
引っ越し先の火災保険も早めに検討しておく
次に住む家が決まっている人は、その物件に合わせた火災保険を早めに検討しておきましょう。
【引っ越し先別の火災保険】
- 引っ越し先が購入物件で住宅ローンを利用する場合:民間の金融機関は加入必須
- 購入物件でローンを利用しない場合:加入は任意
- 賃貸物件に引っ越す場合:加入必須の賃貸会社が多い
特に注意したいのは、相続した実家などローンを利用しない物件に引っ越す場合です。
住宅ローンが不要な物件では、火災保険の加入は義務ではありません。しかし、近年は異常気象による水災・風災被害が増えており、自然災害に対する何らかの備えは必要です。古い建物ほど万一の事故が起きた場合の修繕コストが高額になる傾向にあるため、たとえ任意でも火災保険は検討しておきましょう。
なお、火災保険は補償内容や保険料が保険会社によって異なるため、複数社を比較したうえで加入することが重要です。
まとめ
自宅を売却する際は、火災保険や地震保険の解約も忘れないように行いましょう。
解約を忘れるとその分無駄な保険料が発生したり、解約時の未経過保険料が少なくなったりする可能性があります。解約手続きは引き渡しの数週間前から始め、適切なタイミングで解約できるように準備しておきましょう。
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